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生活再建の“第一歩”速やかに
政府、「罹災証明コーディネーター」創設

2025/10/07 公明新聞3面

 災害時、被災者が生活再建に向けた支援を受ける“第一歩”となるのが罹災証明だ。政府は、罹災証明の業務を迅速化するため、経験が豊富な自治体職員を「罹災証明コーディネーター」として登録し、被災地に派遣する制度を7月に創設した。公明党の主張を受けたものだ。制度の仕組みや創設の背景などを解説する。

■経験豊富な自治体職員をリスト化

 被災者が公的支援を受けるには、基本的に罹災証明書の交付が必要となる。罹災証明書とは、地震や豪雨などの自然災害により住宅が受けた被害の程度を公的に証明する書類だ。自治体職員が現地調査を行い、被害認定基準に従って被害状況を「全壊」や「半壊」などと判定して発行する。

 昨年1月の能登半島地震では、罹災証明書の発行事務経験が豊富な自治体職員が派遣された被災地で手続きが円滑に進んだとされている。これを教訓に、内閣府は7月、経験や知見がある職員をあらかじめ登録する制度を創設した。

 新制度では、罹災証明書の発行や、それに必要な住宅の被害認定調査といった業務経験に長けた自治体職員を罹災証明コーディネーターとして内閣府が登録。平時からリスト化し、必要な職員を迅速に派遣できる体制を強化する。登録される職員は所属の都道府県や市区町村が推薦し、登録の際には地震や風水害、液状化など経験のある災害の種類も記載する。

 取りまとめたリストは内閣府が都道府県に提供する。災害時には都道府県が被災自治体のニーズを把握した上で、リストを基に職員を検索。内閣府や派遣元の自治体と調整し、速やかな派遣につなげる仕組みだ。

 災害発生後、被災者は交付された罹災証明書を基に、支援金や仮設住宅の提供をはじめ、さまざまな公的支援を受ける。被災者支援の観点から迅速な手続きが求められる一方、被災自治体の事務負担が大きく、担当する職員の経験の有無によって対応に差が出ることが課題となっていた。

 その点、罹災証明コーディネーターは現地の職員らと一緒に災害対応に当たり、罹災証明書交付に向けたスケジュールや態勢といった方針策定、被害認定調査の手法などを助言する役割を担う。

被災地に派遣し、業務支援

 内閣府によると10月1日時点で36人を罹災証明コーディネーターとして登録。9月9日には、竜巻などの突風被害を受けた静岡県の牧之原市と吉田町に、同県浜松市から罹災証明コーディネーター1人が初めて派遣されたほか、10月1日には追加で牧之原市に石川県珠洲市から1人が派遣された。現場からは「経験ある職員が現場に入り、円滑に初動対応が取れた」「被害認定調査のスピードが上がっている」といった声が寄せられているという。

 今後の課題は罹災証明コーディネーターの人材確保と育成だ。内閣府は引き続き自治体に推薦を呼び掛けるとともに、登録されている職員に対して定期的に研修を行う方針だという。来年度予算の概算要求に必要な経費を盛り込んでいる。

■住宅の被害調査簡素化も

 内閣府はこれとは別に、地震により被災した住宅の被害認定調査の手続きを簡素化した。

 被害認定調査では、外観を基に被害の程度を判定する「1次調査」を実施した上で、必要があれば住宅内部も詳しく調べる「2次調査」を行う。判定は被害の程度によって「全壊」から「一部損壊」まで六つの区分に分かれる。

 能登半島地震では、住宅内部の被害が大きい場合でも、1次調査を経た上で2次調査に進むため、判定に時間がかかり、公的支援の申請に遅れが生じるケースが指摘されていた。

 このため、内閣府は7月に自治体向けの運用指針を改定。自治体の判断で1次調査を省略して2次調査から着手できることなどを明文化した。また、1次調査の段階で屋根と外壁、建具の三つ全てに一定のずれや変形などがあれば「半壊」と判定できる新たな基準も策定した。

■公明、一貫して推進

 公明党は、これまでの大規模災害の教訓を踏まえ、罹災証明書の発行手続きや被害認定調査の迅速化・簡素化に一貫して取り組んできた。来年度予算の概算要求に向けた重点要望でも、党復興・防災部会(部会長=中川宏昌衆院議員)が、人工知能(AI)やドローンを活用した被害調査の省力化、デジタル技術を生かした罹災証明業務の効率化などを訴えている。

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