能登半島地震で被害を受け、建設・賃貸型仮設住宅や既存の公営住宅に住む被災者に対し、石川県は昨年12月から約4カ月間、「住まい再建にかかる意向調査」を実施した。このほど8410世帯が回答した結果を公表し、回答者の約7割が住まいの再建に動き出せていないことが分かった。公明党の田端雄市能登町議は町内の仮設住宅を回り、住民の声を聴き、課題を探った。=能登半島地震取材班
■費用に頭を悩ます高齢世帯
「再建できるお金は残っていない」――。こう語るのは能登町藤波の応急仮設住宅に40代の長男と2人で住む松波美千代さん(74)。能登町宇出津の自宅は地震により半壊の被害を受け、公費解体で更地に。10年ほど前に退職金を使ってオール電化に改築していた家は跡形もなくなった。現在、年金が唯一の収入源である松波さんは「年金だけでは毎日生活するだけで精いっぱい」と話す。
県が実施した意向調査の回答者で最も多い年代は70代。60代以上を合計すると全体の約8割に当たる。高齢化が進んでおり、松波さんのように世帯主が年金収入で家計を支えているのは全体の約6割だった。
収入が少ないことで再建にかかる工事費用を捻出できない現実。調査で「工事・修理の費用が高額」と答えたのは約3300世帯、「住まい再建に必要な費用の計画が立たない」が約2600世帯に上った。国は全壊した世帯や半壊で住家を解体した世帯に「被災者生活再建支援金」として最大300万円を支給している。松波さんは「支援金はありがたい」と話す一方、「もっとサポートがないと現実は厳しい」と打ち明ける。
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能登半島は、地域コミュニティーを大事にする人が多い。意向調査でも「被災前と同じ住所」で再建を希望する割合が全体の約5割に上り、「住所は違うが被災した市町」の回答と合わせると約7割が地元での再建を希望している。しかし、震災から時間が経過するとともに、気持ちに変化が表れる被災者もいる。
能登町鵜川の自宅が全壊した木村浩美さん(64)は、長男、三男と3人で仮設住宅に住む。木村さんは年金と長男の給与収入で生活費を賄っている。当初は能登町での再建を考えていたが、収入が少ないと悩んでいた長男が生活の安定のため、県南部の能美市にある企業に転職することを決断した。木村さんは「能登には仕事がない。安定して暮らせることが第一条件となる」と話し、長男、三男と一緒に能登を離れるか、離れまいか、悩む日々を送る。
住まい再建へ被災者が抱える課題は多く、一人一人に寄り添った支援が必要になる。県は意向調査の結果を基に、必要な支援制度をまとめたハンドブックの作成・配布や、相談体制を強化する方針。田端町議は「住まい再建にはいろいろな選択肢がある。希望する環境で再建できるよう、これからもサポートしていく」と力を込めた。
■被災者の希望と安心のため全力/党能登半島地震復興加速化本部長 中川宏昌衆院議員
今回の石川県の調査結果で、被災者の約7割が住まい再建に踏み出せていない実態が浮き彫りとなりました。最大の課題は、再建費用の見通しが立たないこと、そして災害公営住宅の整備の見通しに不安を感じていることです。
高齢世帯が多く、健康や収入の不安も重くのしかかる中で、今必要なのは、一人一人の生活再建に寄り添う政策の推進と能登で働き住み続けられるなりわいの支援です。
今後は、住宅確保に向けた伴走支援の強化、福祉部門との一体的な支援体制の構築を政府に強く働きかけてまいります。
被災者が希望を持ち、安心して「住まい」と「生活」を再建できるよう、現場第一の公明党が全力を尽くしてまいります。
